セージ撃破より3か月とんで3日が経過した、今日をもって。
俺たちの逃亡生活は一旦の終わりを迎えることとなった。
「いんやぁ~長かったなぁそれにしても! シャバの空気はうんまいぜぇ!!」
「当初は懐疑的だったが、追われることがなくなるとは、かくも安堵するものなのだな。あれからこれまでの間、本日という日を迎えられたこと、ヒデヨシ公に感謝せねばならん」
「いや2郎お前は快適だったかもしれんけど? 俺様と侭田とやけいの三人は普通に地獄だったからな?? 何回死んだかわからんカメってぐらい過酷な目にあってたからな??? なぁ侭田ァ!?」
「もぐもぐもぐ……もぐもぐ……フゴフゴ……フゴ、ブフゥ~」
エルドア共和国が主催する一大イベントである【ロイヤルギャンブリングトーナメント】への出場受付を済ませた後、選手控室であるラウンジにて俺たちはくつろいでいた。
更新までの――というか、あまりに期間が空きすぎてどこから話したものか判断に迷うところではあるのだが、ともかく。
追跡者であるセージとの博打勝負に大敗を喫(きっ)し、だが機転を利かせ物理的に勝利したのちに、素性の知れないヒデヨシという老人が現れた。
「おぬしらは見所がある。だので、ワシの代わりに近々開催されるとある大会に出て欲しい」
EVO国から逃れ現在俺たちが潜伏しているエルドア共和国では、国内外を問わないギャンブラー同士が争う大会が代々執り行われているらしい。
通常は成績に応じた賞金が支払われるのだが、昨年王位を継承した女帝ヌャイリーンいわく、今年に関しては賞金とは別の報酬を与えるとのこと。
「【覇者の卵】という秘宝でな。これを持ちし者は自らの国を創れる程の、莫大な富と権力をもたらすと言われているシロモノじゃよ」
かつてヒデヨシは辺境の王族であったが、他国の侵略戦争に巻き込まれ今や亡国の敗走者となり下がっているらしく、どうにかしてなり上がる機会をうかがっていたらしい。
「賞金は好きに使っていいし、素養次第であればおぬしらのいずれかが新たな国の王になっても構わん。見ての通りワシはもう老いぼれじゃ。だがの、やられたままで生涯を終えるほどには耄碌(もうろく)しておらん」
カラカラと笑うヒデヨシを眺めながら、実際これはとてつもなくデカいチャンスが到来したと俺は思っていた。
(まぁよくよく考えらたらこの生活をずっと続けるってのも限度があるし、何より金を手に入れたとしても個人対国――状況はジリ貧というか向こうがその気になりゃぁいつでもおらしたしちゃうもんな)
そして深く考える間を置かず、俺は二つ返事でヒデヨシへ参加の意思を示す。
「えぇぞ、やるわ」
「判断の速さ、ナイスじゃぞ。ただまぁ、見込みはあるとしても如何せんお主らはまだまだ弱い。いや、伸びしろがあると言った方がやる気が出るか」
「既に参加枠はいくつか抑えとるからの。それまでの間、ちょっと色々鍛えようかの」
とまぁそんな流れで。
いわゆるお約束でありテンプレートでもある、修行パートに突入することになったのであった。